sseze's blog

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Insta360のものづくりに感じる、深圳らしさ

この記事は第8回ニコ技深圳観察会参加レポート:あの1週間の深圳滞在を振り返ってのトピックその3です。

トピックその2はこちら

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Insta360での集合写真

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日本や欧米にもありそうな南山区の高層ビル。この中にInsta360が入居している。

Insta360は、日本のRECOH THETAが「360度カメラ」という市場を切り開いた2014年に創業し、今ではそのRECOH THETA、またアクションカメラのGoProをも脅かす勢いで世界を席巻しているハードウェアスタートアップだ。

彼らの製品づくりに見える合理主義性は、まずiOS用、Android用で対応製品が分かれていることから見て取れる。

これは自分がスマートフォン接続型の製品を作っていても付いて回る話だが、このようなデバイスを開発する際には、ビジネス上、より広くシェアを獲得したいがために1つの製品でiOSAndroidも、と対応OSを欲張りがちになる。ただこれでは1機種を開発するために2倍か、それ以上のリードタイムが発生することになり、当然ながらその分市場投入も遅くなる。

Insta360では1機種1OSに限定し、リードタイムを大幅に圧縮することで市場投入スピードを高め、更にはファームウェアアップデートによって製品の機能を飛躍的に向上させてしまうといった離れ業までやってのける。まるでiPhoneやTeslaのモノづくりを見ているかのようだ。

また、世界的なシェアを見ればAndroidを選択するところを、あえてiOS専用製品にリソースを集中しているところも潔い。(Insta360では、Android対応製品はAirの1機種のみ)膨大なAndroidの機種依存に対応するコストをカットする意味合いや、360度カメラのような新しいユーザー体験に積極的にお金を落とすユーザーは高所得者層が厚いiOSユーザーの方が多い、という算段があったのかもしれない。


Insta360 ONE – Introducing FlowState Stabilization

深圳観察会の直後にリリースされた新しいファームウェアスマートフォンアプリを紹介するこの動画から分かることは、 この製品は一見するとハードウェアだが、真の価値を作り出しているのはソフトウェアだ ということだ。 ハードウェアを売っているようで、実際にはソフトウェアの作り出すユーザー体験を売っている。

おそらくこの製品は 「360度で撮影した画像・映像をどう活用するか?」 というユーザー体験から逆算して生み出されている。ユーザーは単に 「360度写真・映像が撮りたい」 のではなく、静止画であれば 「人に見せたい・SNSでシェアしたい」 という欲求があり、動画であれば 「撮りたい被写体を、簡単に編集したい→それをYouTubeで共有したい」 という欲求がある。だからこそ、カメラの心臓部であるCMOSセンサーSONY製のものを流用し、スマホ上で動画編集・共有を簡単に行えるようにアプリのユーザー体験を徹底的に作り込んだり、360度映像をソフトウェアで実現するソフトウェアエンジニアにリソースを集中的に投入するのだと思う。

一方、RECOH THETAはハードウェア上で360度映像を作り出しているのだという(今回RECOHつくる〜むから参加した北川さん談)。この辺がハードに強い日本企業っぽい。日本メーカーはこれまで高品質・高信頼性を製品価値として売ってきた経緯から、どうしてもハードウェアの品質向上にリソースを割く傾向がある。

だが、デジタル化した製品づくりにおいてそういった技術はあっという間にコモディティ化してしまう。新興企業に根っからのカメラメーカーを圧倒するほどの製品づくりができるのは、360度カメラという製品がどういう用途で使われるのか、どこに製品の真の価値があるか、といった サービス志向の製品づくりをしているから なのだろう。

こう言葉で書いてしまうと単純に思えるのだが、ハードありきで考えてしまいがちな日本のハードウェアメーカーにいると、これが頭で分かっていてもなかなか行動に移せない。やはりハードウェアプロトタイプがわずか1ヶ月程度で作れてしまう深圳という街の特性と、徹底した合理主義性が、そのことにいち早く気づくためのアドバンテージになっているように感じた。

なお少し余談になるが、今回訪問した会社はかなり多くの会社が実際に製品を開発している真っ只中のオフィスの中をぐるりと見せてくれたのもとても印象深かった。「え!?ここまで入っていいの?」と思わされる場面が多々あったのだが、もしかすると「ソフトの開発風景なんかどこの国でも変わらないし、別に真似されたっていい」「敢えてオフィス風景を見せてしまった方が会社のプレゼンス向上に繋がる」といった考えがあるのかもしれない。(ニコ技深圳観察会、あるいは高須さんの深圳でのコネクションの賜物という可能性も大いにあるが)

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Insta360の社内風景(一応遠巻きに撮ったもの)

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Insta360のプレゼンは人数の関係上オフィス近くのカフェで行われた

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その場で衝動買いしたInsta360 ONEと付属品。

そんなこんなで、Insta360でアツいプレゼンに聴きふけっているうちに、自分も気がつけばその場でInsta360 ONEを衝動買いしてしまった!しかも、純正の撮影時に消える自撮り棒とBTリモコン付きで、日本で買うよりも数千円ディスカウントしてくれるという・・・。本当に恐れ入った。自分を含めてその場で11人がInsta360製品を爆買いしていく様も、熱量の高いニコ技深圳観察会っぽさがあってとても良かったwやっぱり深圳はすごい!

Insta360 ONEはその後、会社で「これが今の中国・深圳だ」というのを説明するのに使ったり、(下は自分の所属する部署の会議で集合写真を撮ったもの)

https://s.insta360.com/p/0c0b609ee4dcaf73c6bfdbdd1e7e130a

プライベートでもどこにでも持ち歩いて、いろいろな人を驚かせている。

https://s.insta360.com/p/bf5ce67eb9e2c4d2c7d9234ba5264be4

https://s.insta360.com/p/87dcf916d607be7b19ca41ead18c6839

https://s.insta360.com/p/e82c4d8783ab37c6ca8fb931df03be3a

https://s.insta360.com/p/e9ab5f8855d2c1f959c9e0652e6b7726

https://s.insta360.com/p/9d2e60083f6c4e87a05505862739ab84

https://s.insta360.com/p/6b2413290207d07e7a9a73abd4ff31cf

こんなに衝動買いして良かったと思える製品に出会ったのはいつぶりだろう?

(それにしてもBBQの写真多すぎであるw)

つづく